親が元気なうちに、聞いておきたいこと 「あのとき聞いておけばよかった」と思う前に

親の介護や看取りのことを、まだ先の話だと思っている方は多いと思います。

今はふつうに話せる。
歩ける。
食べられる。
顔色も悪くない。
だからこそ、切り出しにくいのです。

最期をどこで過ごしたいか。
急に具合が悪くなったら、どうしてほしいか。
延命治療を望むのか。

そんな話を親に聞くのは、まだ早い気がします。縁起でもないように感じるし、傷つけてしまうのではないかと迷います。

そのためらいは、とても自然です。
でも、介護や看取りで本当に大事な話ほど、元気そうに見えるうちでないと聞けないことがあります。
状態が悪くなってからでは、本人が思うように話せないことがあります。
家族も焦ります。兄弟や親戚で意見が分かれることもあります。

そのときになって初めて、本人はどうしたかったのだろう、この選択でよかったのだろう、あのとき聞いておけばよかったと、何度も思い返すご家族がいます。

医療介護の現場では、こうした後悔の声を聞くことがあります。

愛情がなかったわけではなく、冷たかったわけでもありません。
ただ、大事な話をするきっかけがないまま、介護だけが先に進んでしまう。

介護では、突然大きな判断を迫られることがあります
介護は、ゆっくり準備できることばかりではありません。
ある日突然、体調が変わることがあります。
急に息苦しそうになる。
食事が取れなくなる。
意識がぼんやりする。
転倒する。
痛みが強くなる。

そのとき、家族は判断を迫られます。

救急車を呼ぶのか。
病院へ行くのか。
家で様子を見るのか。
入院を希望するのか。
できるだけ自宅で過ごす方向にするのか。
もしそのとき、本人がはっきり希望を言えなかったら、家族が決めることになります。

もちろん、医師や看護師、ケアマネジャーなどの専門職と相談しながら決めていきます。

それでも、家族の心には迷いが残ることがあります。

病院に連れて行った方がよかったのかな。
家にいさせてあげた方がよかったのかな。
苦しい思いをさせてしまったのではないかな。
本人の望みと違ったのではないかな。

こうした迷いを少しでも軽くするために、元気なうちに話しておきたいのです。

まず聞きたいのは、どこで過ごせたら安心か
これから先、どこで過ごせたら安心かを聞いてみてください。

これから体調が変わったら、どこで過ごせたら安心?
できるだけ家にいたい?
病院にいる方が安心?
施設も考えている?
家で過ごすとしたら、何が不安?

すぐに答えを出さなくても大丈夫です。

ここで知りたいのは、本人の願いです。

本人は、できれば家にいたいと思っているかもしれません。
でも、家族だけで24時間支えるのは難しいかもしれません。
反対に、家族は家で看てあげたいと思っていても、本人は迷惑をかけたくないと思っていることもあります。

だから、話しておくことに意味があります。

本人の希望を無理に全部かなえるためではありません。
本人の気持ちと、家族が実際にできることを、少しずつ重ね合わせていくための話です。

もしものときの医療についても聞いておきたい
もうひとつ、聞いておきたいことがあります。

もしものとき、どこまで医療を望むかです。

これは、とても話しにくいテーマです。
救急車を呼ぶのか。
入院を望むのか。
延命治療を望むのか。
痛みを取ることを優先したいのか。
できるだけ自然に過ごしたいのか。

縁起でもない話に聞こえるかもしれません。
でも、本人の希望を知らないまま急変すると、家族はその場で決めることになります。
その判断は、とても重いものです。

元気なうちに少しでも本人の考えを聞いておくことは、家族にとって大きな支えになります。

たとえば、こんな聞き方なら少し入りやすいかもしれません。

急に具合が悪くなったら、病院に行きたいと思う?
苦しい治療を続けるより、痛みを楽にすることを大事にしたい?
最期まで、できるだけ自然に過ごしたい気持ちはある?

一度聞いた答えが、ずっと変わらないとは限りません。
人の気持ちは、体調や状況によって変わります。

だから、答えを固定するために聞くのではありません。

その人が何を大事にしているのか。
どんな過ごし方を望んでいるのか。
それを家族が知っておくために、聞いておくのです。

家族がどこまで支えられるかも話しておく
介護の話になると、どうしても本人の希望が中心になります。

家で過ごしたい。
入院はできるだけしたくない。
家族にそばにいてほしい。
その願いは、もちろん大切です。

でも、介護する家族にも生活があります。仕事があります。家庭があります。体力にも限りがあります。
眠れない日が続けば、体はもちません。気持ちが折れる日もあります。
家族が倒れてしまえば、介護は続きません。

だから、元気なうちに、家族ができることと、助けが必要なことも話しておきたいのです。
これは冷たい話ではなく、介護を続けるための話です。

家で過ごすなら、夜の対応は誰ができそうか。
仕事をしながら、どこまで関われそうか。
兄弟や親戚に何を頼めそうか。
訪問看護や介護サービスを使うことに抵抗はないか。
家族だけで難しくなったとき、誰に相談するか。

ここを曖昧にしたまま介護が始まると、あとで誰かひとりに負担が集中することがあります。

そして、その人が限界を迎えてしまうことがあります。

介護は、ひとりで背負いきれるものではありません。
不安になるのは、弱いからではありません。
限界を考えるのは、冷たいからではありません。
助けを求めるのは、愛情が足りないからではありません。

長く支えるためには、助けを入れることも必要です。

いきなり深刻な話から始めなくていい
親が元気なうちにこうした話をするのは、希望を奪うためではありません。

それでも、こんな気持ちになる方はいると思います。
そんな話をしたら、親が悲しむかもしれない。
死を待っているみたいで嫌だ。
まだ元気なのに、失礼かもしれない。

だから、いきなり看取りの話から始めなくていいのです。
最初は、たったひとつでかまいません。

これから先、もし体調が変わったとき、どこで過ごせたら安心?

この一言だけでも、十分です。
すべてを一度に決めようとしなくていい。
親の中にある願いを、まだ言葉にできるうちに、少しずつ聞いていくことが大切です。

これは死の準備ではなく、これからをどう生きるかの話
病気や介護の話に見えるかもしれません。
でも本当は、これからをどう生きたいかを一緒に考える時間です。

どこで過ごしたいか。
誰と一緒にいたいか。
どんなことを大事にしたいか。
苦しいとき、何を優先したいか。
家族に何を知っておいてほしいか。

先に聞けたことは、準備になります。
聞けないまま過ぎてしまったことは、後悔になることがあります。

親が本音を言えなくなる前に。
家族が限界を迎える前に。
急な判断を迫られる前に。

元気なうちに、少しずつ聞いてみてください。
大切な人のこれからを、家族だけで抱え込まないために。本人らしい時間を、少しでも守るために。

今日からできる小さな一歩
重く切り出さなくて大丈夫です。

お茶を飲んでいるとき。
一緒にテレビを見ているとき。
病院の帰り道。

ふとした会話の中で、こんな一言から始めてみてください。

これから先、もし体調が変わったら、どこで過ごせたら安心?

その答えを、まとめる必要はありません。

親の言葉を聞く。
家族で共有する。
必要があれば、訪問看護師やケアマネジャーに相談する。

それだけでも、介護や看取りへの不安は少しずつ整理されていきます。

大切なのは、ひとりで抱え込まないこと。

親の想いも、家族の不安も、言葉にするところから準備は始まります。

親の介護や看取りについて、何から考えればいいか分からない方は、訪問看護ステーションまりあまでご相談ください。
ご本人とご家族の想いを大切にしながら、これからの過ごし方を一緒に整理していきます。

訪問看護ステーションまりあ
管理者兼看護師 佐藤絢美

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